10月18日付けの「山陽新聞」朝刊・「芸能」欄 で、 VOICE SPACEと倉敷インスピレーションについての記事が掲載されました! 以下、全文です。(とっても詳しい!!)
 現代詩+音楽=新芸術? 第2回倉敷インスピレーション
「山陽新聞」10月18日朝刊「芸能」欄 より
第2回倉敷インスピレーション
現代詩と現代音楽。ともに「ナニヤラ難しそう」と敬遠されがちな両者が、9月末日、倉敷で一つになった。言葉による新たな芸術を探るイベント「第2回倉敷インスピレーション」でのこと。この夜、倉敷アイビースクエア(同市本町)は、出演者の発する言葉と音がせめぎ合い、溶け合う実験場となった。
現代詩+音楽=新芸術? せめぎ合い、融合の場/東京芸大生が出演
倉敷インスピレーションは「詩と音楽のコンサート」をテーマに詩人の谷川俊太郎さん、佐々木幹郎さん、フォーク歌手の小室等さんを招いて昨年スタート。今年は東京芸術大学音楽学部生らでつくる同大現代詩研究会・VOICE SPACEが加わり、「歌」や「朗読と伴奏」といった言葉と音の既存の関係を越えた表現を提案した。
宗教音楽を下敷きに三人の女声アカペラが即興で対話形式につづる「朝顔」(詩・佐々木さん)は、秘密の呪文を盗み聞きする雰囲気。シンプルな節と語りの箏独奏「ひとこと」(同)は、邦楽特有の間で、行間の沈黙の重みを際立たせた。
谷川さんの詩集から五つの詩を抜粋、一つに再構成した作品もあった。叩きつけるピアノの音とささやく群唱が、耳の奥で虫がゴソゴソ動き回るようで不快な「殺す」。大仰な演歌調で通販番組よろしく言葉を並べ立てる「不思議」。鼓、アコーディオン、バイオリンなど総勢十一人の演奏は、現実味とうそくささを切り張りしたCG映像みたいで、いかにも現代らしい。
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同研究会は二〇〇四年、佐々木さんと成田英明・同大教授を顧問に発足。管弦楽、声楽、邦楽、作曲など多様な専攻の学生、院生、卒業生計二十人が「これまで言葉のリズムやイメージ先行で内容をおろそかにしてきた」(成田教授)との反省に立ち、詩と音楽の響き合いを追求している。
現代の詩であることが鍵だ。それも音楽化を前提に作詞家が作った「詞」ではなく、あえて歌にしにくい形態の詩人の「詩」。小室さんはその先駆者だが、クラシック界から現代日本語への挑戦はほとんどないという。
学内公募も含め春先から作品を練り上げてきたメンバーは「いびつで未熟なりに強烈な印象があると思う」。「鉄腕アトム」のテーマ曲から武満徹作品まで、幾多の詩を音楽化されている谷川さんを「人の詩をお団子のようにこねたり丸めたり。ここまで尊敬されないのは初めて」と喜ばせた。
けれど、特定の音楽は、詩が聞き手にもたらす想像を狭めてしまわないだろうか。 「いや、むしろ詩にとってセーフティネットになる」と佐々木さんは言う。「現代詩とは『生きるってのはどういうことだ』という謎、問いで結論はない。大抵は読むと答えを探してしまうが、音楽はことばを包み込んで問いを問いのままスッと届けてくれる」
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そもそも現代詩と西洋音楽は明治時代に輸入された双生児のようなもの。その後別々に歩んできた二つを゛再会″させる実験の舞台に倉敷が選ばれたのには訳がある。
数年前、倉敷市酒津に児島虎次郎が壁画制作のため建設したアトリエ・無為村山荘を訪れた佐々木さん。*約八十年前、作画に没頭した虎次郎の思いをタイムカプセルのように保つ場所で「ぞくっとした。文化の原形のようなものを残すこの街でなら、一から『ぶつかり合い』をやれると思った」と振り返る。 言葉と音楽の可能性はどこまで広がるか―。会場を包んだ熱気が期待の大きさを語っているだろう。 (平井美佳)
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【写真キャプション】アンコールにこたえ谷川俊太郎さん(左端)らと歌うVOICE SPACE=9月30日、倉敷アイビースクエア
*佐々木氏の「無為堂」訪問についてはこちら!
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